【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 ベッカーは最後に、いつもの厳めしさを取り払った清々しい表情で口元をほころばせた。ミーミル様も満面の笑顔で元気に手を振ってくれる。

「またね、エルシア!」
「はい……またここに帰って来ます! いつの日か……」

 そんな私の答えに満足したのか、連れだって去ってゆく二人。そして、この場には殿下と私だけが残された。

「……隣りに行って構わないかな?」
「ええ、どうぞ」

 ミーミル様があんなことを言うから、ちょっぴり意識してしまった私はなんとはなしに真下に広がる王都の街並みを眺める。殿下も同じようにそうした。

 夏が終わりかけ、吹く風はすでに涼しく、まるで旅立つ頃に戻ってしまうかのようだ。思えば、半年近くもこの場所に留まっていたことに、驚きを抱く。
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