【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 『魔性の女』だなんて、私にこれ程似合わない言葉もないだろう。
 場の雰囲気も相まって、それがツボに入った私はけらけらと笑う。
 でも殿下はそれを見て不満そうにこちらを睨んだ。

「君は、時々わざとかっていうくらい鈍感だよな。でもそれなら私ももう遠慮しない」
「えっ!?」

 次の瞬間私の身体は強く引き寄せられた。
 お互いが触れ合う位置まで近づいた私は、殿下の顔を驚愕の表情で見あげる。
 深い、緑の相貌が私の視線をぐっと引き寄せて――なんて、綺麗な……。

「やっぱり、直接言わないと駄目だな。私は君が好きだ」
「――――ッ!」

 緊急信号――その言葉はいかに(にぶ)ちんな私の神経にも鋭く刺さり、視線と顔を目一杯横に逸らさせた。首が酷い音を立てた気がするが、気にしている場合ではない。
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