【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 ああ、くらくらする。直前に言われた言葉なのに、頭が受け入れを拒絶している。誰が、誰を、なんて……?

「伝わるまで何度も言うよ。君が好きだ。叶うなら全てを捨てて、君に付いて行きたいくらいに」
「じょ、冗談は止めてください!」

 私は彼の身体を押しやろうとする。でも殿下の鍛えられた身体はびくともせず、そも私の身体に全然力が入らない。

 繋がれた手から、彼の熱い体温と脈が伝わり、目を閉じてもそれはうるさく私を刺激する。いや、うるさいのは私の心臓の方なのか。もう何が何だか、わからない。

「落ち着いて」
「こんな体勢じゃ落ち着けません! と、とにかく離してください!」
「嫌だ」
「勘違いでしょう! どうして私なんかを、わざわざ選ぼうとするんです!」
「そうだよ。僕が君を選んだんだ」

 殿下の精緻な顔が再び私に近付き、囁く。
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