【WEB版】追放したくせに戻ってこい？ 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります！ めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく

　他人が大変なのを、お茶でも優雅に飲んで頬杖着いて、せせら笑うのがわたしの趣味。だって、そうしているととっても豊かな気分になれるじゃない？　寸暇を惜しみ、時には怒号を響かせながら治癒術の行使に明け暮れる聖女たち。なのに、わたしだけがソファに寝そべり、こうしてマカロン片手に流行の恋愛小説を楽しみながらくつろいでいるのよ？　想像できる!?　くぅ～、自己肯定感がうなぎのぼりだわ！

　今頃もしかすれば、大教皇とか司教クラスの男性聖職者に苦情を申し立てている聖女も居るかもしれないけれど、抜かりはない。こういう時のためにたっぷり袖の下を渡してある。放蕩三昧だったわたしが聖女として籍を置き続けられているのもそのお金の力があってこそである。

　ちなみにそのお金は父や母が理由も聞かずぽんと出してくれた。アズリット家は大聖女たる姉の働きと婚約のおかげで相当潤っている状態だから、多少の散財なんて訳ないのだ。

　わたしがばら撒いたお金には、少なからず姉が血の滲む努力で得たお金も含まれていたはず。それをわたしがそんなことに使ってたと知ったら、どんな顔するんだろ。想像すると、超楽しい。