【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 私は懐に隠したポーチから、お守り代わりに入れていた金のブレスレットを取り出した。殿下はそこについていた小さな宝玉を取り外すと、私に返す。

「これで魔族の姿にはならないから、身に付けていてくれると嬉しい。僕には君に貰ったこれがあるからね」

 殿下は自分の右腕に嵌まった緑硝子の腕輪を掲げた。
 それを見た私は照れて言った。

「ごめんなさい。こんなことなら、街に行ったとき一緒にアクセサリーも見て回ればよかった……」
「ううん。いいんだこれで……君がくれたものだから」
 
 そこでようやく殿下は私を開放する。
 私はその場にへたりそうな身体を城壁に寄せて、苦笑する殿下と共に街から流れて来る魔族たちの声に耳を澄ます。

 喧噪に混じって、どこからか弦を弾く高い音がする。
 その音色は心地よくこの街に溶け込み、きっと何十年先も変わらず奏で続けられるのだろう。
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