【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 それは石床を叩いてどんどん近付いてくる。

 誰だろう……もしかしてベッカーたちが戻って来たのかとも思ったけれど、すぐにそれは物々しい軍靴の奏でる音だと分かった。

「クリスフェルト殿下、ご報告が……!」
 
 一人の兵士が息を切らしながら階段を駆け上がってきたのだ。その声は非常に切羽詰まっており、殿下と私は思わず彼に駆け寄る。
 
「一体何があった、教えてくれ」

 息を整えた後、兵士は顔を上げて緊張の面持ちで告げた。

「……ハッ! 今しがた西部国境を治めるローバー伯が送られた早馬より……セーウェルト王国より交渉の使者が参ったと連絡がありました! 今現在兵を付けて監視させ、こちらへ護送している途中のようです」
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