【WEB版】追放したくせに戻ってこい？ 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります！ めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく

　随分と勝手な言いぐさを、ギーツ様は立ち上がって一息に言い放つ。
　彼が私たちを見回し、異様な沈黙が場を包んだ。

「ふ、ふふ。どうやら異存はないようだな。ではすぐにでも、これらを確約する書類を整えてもらおうか」

　それにも臆さず話を続けるギーツ様の度胸も中々大したものだが、しかしその表情はすぐに凍り付くこととなった。

「ふざけておるのか」

　――ズム。

　と、目の前の卓に拳が叩きつけられ、部屋全体が揺らいだような感覚がして……。

「あまつさえ自国の多くの民の命を救った聖女を資産呼ばわりし、そしてそれを丁重に保護した我が国に対してのその振る舞い……。セーウェルトは戦に勝ったつもりででもおるのか？」
「な……なんっ……」

　獣の唸り声を何倍も低くしたような……地底から這い上るような陛下の声がギーツ様に放たれ、彼の表情は目に見えて青くなる。