【WEB版】追放したくせに戻ってこい？ 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります！ めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく

　そして、隣にいる殿下も刃のような冷たさを宿した声でギーツ様を責めたてた。

「領土の三割をよこせだと？　他国の民とはいえ、一体どれだけの数の魔族が住む場所を失い、飢えや貧困で苦しむと思っている？　次期王太子となる者……為政者が軽々しく放っていい言葉ではないぞ。自分の領地に住む者たちの顔をまともに見たことがあれば、そんなことは言えないはずだがな」
「ぐうっ……たかが数が多いだけの野蛮な民族の頭目風情が……」
　
　その圧力に屈しそうになりながらも、言い返すギーツ様。

「き、貴様らこそ……わかっているのか!?　我々セーウェルト王国に叛けば、当国のみならず周辺諸国が黙っておらんのだぞ！　今まで貴様らの領地が存続していたのは我らが温情を掛けてやっていただけで……各国と協調しジュデットを本格的に攻撃すれば、蛮族のどもの文明など三日で滅ぼして……」
「ギーツ様、いい加減になさってください！」

　それを聞いていた私は途中で頭が痛くなり、つい叫んでしまった。

　この人はこの国に喧嘩を売りに来たのだろうか。