【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 仮にも王太子である身分の方が自国と比肩する勢力の国家を、あまつさえその国の国王の前で蛮族呼ばわりするなんて。陛下や殿下がどんな表情をしているのか怖くて見られない。流血沙汰になったらどうするつもりなのだ。

「あなた様は私がここに来た事情をご存知でないからそんなことが言えるのです! 彼らは、旅先で矢傷に倒れた私を治療するため、この世に二つとない秘宝を使って私をこの国に送り届けてくださったのですよ! 容態が安定するのが長引いてこの国に長く留まることになりましたが、私は数日後書状を携えて、ちゃんと国に帰還する予定でした。本来なら感謝こそすれ、糾弾するなどもっての外! ましてやそれを盾に無茶な要求を通そうとするなど……お言葉を改め、お二人に謝罪してください!」

 私のそんな釈明を聞き、ギーツ様は舌打ちしながら呟く。

「ふん、すっかり魔族に毒されおって。それに……知っておるのだぞ、貴様はこの国では別姓を名乗り、そちらの王太子と仲睦まじく過ごしていたそうではないか! 聖女の誇りも忘れたか!」
「そ、そんなことっ!」

 私はつい過剰に反応してしまう。まさかクリスフェルト殿下との行動まで知られていて、こんな場で暴露されるとは思いもよらない。
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