【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 こうまでして、魔族を排斥しなければならない理由がセーウェルト側にあるの?

 しかし……ギーツ様の口からは、期待した答えは得られなかった。

「……それは、私も関知していない。なんでも、代々王太子が国王に就任した際にのみ閲覧を許される書物が存在すると聞いたことはあるが……」
「気になるな……。一体どのような内容なのだ。魔族と聖女の発祥に関係する何かが、そこに描かれているとでもいうのか?」
「やも知れぬが……ハッ、何故私がこんなことまで貴様らに明かしてやらねばならぬのだ。このことは決して口外するなよ! それよりも、我々の提示した条件を呑むのか呑まんのかはっきりさせていただこう!」

 そんな問いかけに考え込みそうになったギーツ様だが、さっさと話を終えてしまいたいのかまたも偉そうな口調に戻り、陛下が渋い顔でジュデット側の対応を述べる。

「いい加減にしてもらいたい。我が国として応じられるのは、エルシアの返還という一点だけだ。元々彼女も望んだことであったからな。しかし、これ以上我が国から何かを奪おうというのであれば、それすら考え直さねばならんぞ。そんな強欲な国にエルシアを返せば、再び彼女が意に染まぬ扱われ方をされかねん!」
「ぐうっ、足元を見よって……」
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