【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 握りこぶしを震わせ、言い募ろうとするギーツ様。
 そこで今まで黙っていたリリカが何事かを耳元で呟き、その腰を下げさせる。
 そして、立ち上がり、深く礼をした。

「ジュデットの皆様……今、わたしたちの王都では非常に多くの病が流行っております。わたしの実力不足もさることながら、姉という存在が大聖堂を離れたことの影響は予想以上に大きく、このままでは多くの民が命を落とすことになりましょう。他の条件は置くとしても、どうか姉の身柄だけはこちらにお返し願えませんでしょうか」
「先ほども言った通り、それだけであれば応じよう。しかし、こちらも条件を付けさせてもらう……。我らが友であるエルシアは、かつてそちらで不当な扱いを受けていたと聞いておる。国に戻した途端、またそなたらによって彼女が苦しい思いをさせられることも考えられる。よってこちらからもエルシアに護衛を付けさせていただく」

 陛下はこちらに目配せをし、私は少しほっとしてしまった。今はこうして大人しいふりをしているけれど、妹が何を考えているかが不気味で、不安に思えて仕方なかったからだ。

「構いませんわ、ねえギーツ様……」
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