【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「ふん、そのくらい好きにするがよい。ならば、書面は明朝用意し、エルシアの引き渡しと同時に署名していただく! 本日はこれで失礼する。リリカ、ゆくぞ!」
「本日はお会いできて光栄でした。失礼致します魔族の皆様……それと、お姉様も」

 ギーツ様は席を立ち慇懃に一礼すると、仏頂面のまま扉を勝手に開けて出て行く。それに従いリリカも微笑んで礼をすると、彼の後に続いていった……。


 交渉は終わりを告げ、立席しそれを見送った陛下が重たい息を吐き出す。

「まったく、無礼な小僧めが……あれが世継ぎとは、セーウェルト王国は厳しい時代を迎えることになるぞ」
「周りを固める者が賢くあることを願うばかりですね。エルシアの為にも……」
「お二人とも申し訳ありませんでした。セーウェルトの一国民として恥ずかしい限りです」

 私は二人の間で縮こまる。まああのギーツ様が他人に遜ってるところなんて想像は出来なかったし、きちんと話し合いが着地しただけでも、有難いというところなのかも知れないけれど。
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