【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく

36.魔族の王、息子を案ずる(ベルケンド視点)

「やあ。ベルケンド殿、お久しぶりでありますな」

 魔族の国ジュデットの国王である儂――ベルケンド・アルヴェ・ナムス・ジュデットはこの日、他国に赴き周辺国家との会談に参加していた。

 この大陸を東西に大きく跨る形で支配しているのが、我がジュデットとセーウェルト王国であり、いくつかの国がその南北を挟んでいる。本日はその北寄りの三国との話し合いだ。

 先代の頃は、我々の姿を見掛けるだけで剣を抜くような無礼な輩もいたと言うが、現在は比較的魔族に友好的な国家が多く、以前とは違って積極的に外交の申し込みを受けている。数年後には我々も本国に大使館を築き、彼らと人と人との交流を始めるつもりでいる。

 先だって行っている貿易に関しての課税率の交渉や、扱う品目の増減が主となる話し合いは穏やかに進み……それが終わったのち、こうして一人の男性が話しかけてきたところであった。

「フィーゴ殿もお変わりなく。ご壮健で何よりです」
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