【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「ふうむ……。実は先日、儂もライソン殿の倅にそのようなことを言っているのを聞きました。一体どのような内容なのか、ぜひ知りたいが……」

 それを聞いてもフィーゴ殿はさして驚かずに頷くのみだ。
 何も言わないが、エルシアを巡りセーウェルトとの間に緊張が生じていたことも、この方なら存じているのかも知れぬなと、儂は思った。

「まあ、セーウェルト側にとって都合のいい内容が記されておることは想像に難くないでしょうなぁ。しかし、今まで真実とされてきた、魔族が邪なる者だという伝承が虚構であったのならば、一体誰が何の目的でそのような嘘を広めたのかのぅ……? いや失礼、どうしても好奇心が疼いてしまいましてな」

 フィーゴ殿は国王とは別に、歴史学者である側面も持つ。魔族の潔白を証明するための資料を集める際にも彼の手を大いに貸りることとなった。

 他にもフィーゴ殿は同盟各国に我が魔族たちとの協調を説いていてくれている。それが優先的に我が国との交流でもたらされる利権を獲得しようと思ってのことだとしても、我らとしては有り難い。これからも彼らとは是非よい関係を築いていきたいものだ。
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