【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
そんな中、フィーゴ殿は一段と声を低くし、とぼけたように軽い口調でクリスの近況を聞いてきた。
「そういえば、そちらの王太子もそろそろ、適齢期というやつではありませんかな? 実は以前ご挨拶差し上げた孫たちが、是非ともクリスフェルト殿にまたお会いしたいとせっついてきておりまして」
「ああ、それはありがたい申し出だ。ですが……」
ソムネル王はもうお年で、ここ数年のうちに息子に王位を譲るだろうと言われている。そして以前、クリスと次期国王殿の娘との婚約話が持ち上がったことがあった。クリスは彼女に興味がなく、返答は保留とさせていただいたが、どうやらあちらは未だクリスにご執心であるようだ。
儂の短い沈黙は、聡いソムネル王からすれば答えを知るのに十分であったようだ。彼は意地悪く口の片側を上げる。
「もしや、自国でどなたか、王太子の心を射止られた姫君が現れたか?」
「……まあ、そんなところですかな」
我輩は言葉を濁し、幾分か残念そうな様子でソムネル王は肩をそびやかして見せた。
「やれやれ、孫には辛い知らせを送らねばなりませんか。いや、しかしめでたい。式の日取りはいつ頃になりそうですかの?」
「そういえば、そちらの王太子もそろそろ、適齢期というやつではありませんかな? 実は以前ご挨拶差し上げた孫たちが、是非ともクリスフェルト殿にまたお会いしたいとせっついてきておりまして」
「ああ、それはありがたい申し出だ。ですが……」
ソムネル王はもうお年で、ここ数年のうちに息子に王位を譲るだろうと言われている。そして以前、クリスと次期国王殿の娘との婚約話が持ち上がったことがあった。クリスは彼女に興味がなく、返答は保留とさせていただいたが、どうやらあちらは未だクリスにご執心であるようだ。
儂の短い沈黙は、聡いソムネル王からすれば答えを知るのに十分であったようだ。彼は意地悪く口の片側を上げる。
「もしや、自国でどなたか、王太子の心を射止られた姫君が現れたか?」
「……まあ、そんなところですかな」
我輩は言葉を濁し、幾分か残念そうな様子でソムネル王は肩をそびやかして見せた。
「やれやれ、孫には辛い知らせを送らねばなりませんか。いや、しかしめでたい。式の日取りはいつ頃になりそうですかの?」