【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「エルシア様、あなたはずっと私の憧れでした。私もいつか、あなたのように誰かの目標にされる人になりたいです」
「うん、きっとなれるわ。だって、その我慢強いところ、私とそっくりだし……なんてね」
「えへへ、嬉しいです」

 大聖女に成り立ての時や妃教育の時も、何度逃げ出そうと思ったか分からないんだから――そんなことを冗談めかして口に出すと、私たちは笑い合った。

 ひんやりとした夜気を吸い込み、肩を寄せ合いながら二人で夜の星を見上げる……。

 そうしていると、不意に後ろから声が掛かった。

「お姉様、プリュムさん。最後までお疲れ様でした」

 そこにあったのは我が妹リリカの姿である。
 手には二つのグラスを乗せたお盆がある。

「宴はもう始まっていますわ。よかったら今宵の主役のお二人にもと思って」
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