【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 二人はそれを聞いても責めることはなく、私が帰ってきたことを喜んでくれる。
 その様子に、私の気持ちもわずかに落ち着いた。

「そういえばリリカは? あの子はお父様たちに何か話したりしなかった?」
「実はここに閉じ込められてから、私たちもあの子と会っていないのよ。一体、今どうしているのかしら」
「元気でいることだけは確かだから安心して。でも……」

 今ここであの出来事を二人に伝えても混乱させるだけだ。どう話題を切り替えようか口を噤んでいると、話し声が聞こえていたのか、私の目醒めに気付いた兵士たちが牢に向かってくる。

 目の前で鉄格子の扉が開いた。

「出ろ。陛下がお前を連れて来るようにと仰せだ」
「待って、父や母は何も悪いことをしていないんでしょう? どうかお願い、二人を元の生活に戻してあげて!」
「そんなのは我々の知ったことでは無い。さあ来い!」
「やめてよ!」
「貴様、娘から手を放せ!」
「エルシアーっ!」
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