【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 腕を掴んで立ち上がらされた私は、両脇を兵士に固められたまま牢の中を沈んだ気持ちで歩く。その背中を追うように、暗闇の中で両親の悲鳴が反響した。



 そして私が引きずり出されたのは、セーウェルト王城の謁見の間である。
 ここに来たのは、ギーツ様との婚約の際、国王と王妃に顔合わせをした時以来だ。

 今はセーウェルト王ライソン様だけが玉座に座り、私に冷たい眼差しを投げかけている。そしてその近くには、ギーツ様と口元に笑みを浮かべた妹リリカの姿があった。

 私の身体が、どっとセーウェルト王の前に投げ出される。

「「エルシア・アズリットをお連れいたしました」」
「うむ、下がっておれ」

 セーウェルト王は兵士を片手で追い払うと、私を詰った。
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