【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 今一この王太子は度胸が足りないところがある。躊躇う彼にわたしは発破をかけて、現状を正しく認識させてやる。

「もはやわたしとあなたは一蓮托生でございますわ。陛下は身内に甘い方ではなさそうですし、今回のこと、しくじればその御命も危ういですわよ?」
「……や、やむを得ん」

 するとギーツ様はやっとアズリット伯爵――わたしの父上の首に腰から抜いた長剣の切っ先を触れさせた。

「止めて!」

 姉の悲鳴も今のわたしにとっては大変なご褒美だ。嬉しくなりながらわたしは彼女に聖女の秘術書を差し出して命じてやる。

「やめて欲しいなら、とっととここに書かれた秘術の呪文を詠むのよ! そうすれば、父上と母上の命は保証すると、陛下も約束されたじゃないの!」
「それは……」
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