【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 コクリと頷くとコップが口元にあてがわれ、含ませる様にわずかずつ、水が口に流し込まれる。喉が痛くてまたこほっと咳が出た。

 それが済むと彼は私を元通りに寝かせ、じっと見ている。
 冷たい水が頭を少しはっきりとさせ、私は色々な疑問を持つ。

 朧げに思い出されるのは、意識が消える前に見た、あの美しい青年の姿だ。
 彼が、私をここに運んで、手当てしてくれた?

 あの時はまだ、王都を出てしばらくも経たない内だった。
 隣街との中間地点辺りをうろうろしていたはずだ。だとしたら、ここは王都か隣街のどちらかの、どこかの医院の一室か、もしくは適当な民家などに運び込まれたか。

 しかしそれにしては、どうもなんだか部屋が豪華すぎる気がしてならない。
 実家もそれなりだったけれども、この部屋は段違いに整い過ぎている。
  
(ここは、どこですか)
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