【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「待ってくれ、話がしたい! 現在セーウェルトで数日後に処刑が決まっている聖女に私たちは大きな恩がある! 彼女を救いたいんだ!」

 この呼びかけでもし交渉の余地がなければ、強行突破もやむを得ない。
 そんな覚悟で臨んだ私だったが……意外なことにセーウェルト側は弓を下げ、我らへの攻撃の手を止めた。

 先程声を上げた人物が少数の部下を伴いこちらに進み出たので、私はそれを迎える。

「そなたは、もしやジュデットの王太子か? 当国の聖女を助けたいという話は誠なのか?」

 つい先日まで戦っていた相手だ。彼が疑いを見せるのは当然だが、私はその目を見て信じてもらえるように必死に語りかける。

「ああ、それ以外に私たちの目的は無い。私自ら危険を冒し先陣を切っていることが、戦う意思の無いことを示していると理解して貰えば幸いだ。君たちの元にも届いているんだろう? 元大聖女であったエルシア嬢が一週間の後、王都にて処刑されるという知らせを」
「……聞いている。しばし待て」
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