【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 指揮官はしばし沈黙する。
 意思の固そうな壮年の男は、深い皺を額に刻んだ後周りの者たちと話し合い、そして大きく息を吐いて私に告げた。

「条件がある。我らがいつでもその後背を付けるよう、後ろから監視させてもらおう。貴様ら魔族を手放しで信用することは出来んのでな。貴様たちがもし国内で略奪や戦争行為を行うようであれば、直ちにその場で殲滅する。それでよいなら通行を許可しよう」
「いいのか!?」

 私はここまですんなりと通して貰えるとは思わずに驚き、彼は顔をしかめたまま、鎧の手甲を外して見せた。そこには動かせているのが不思議なくらいの深い傷がある。

「エルシア殿には大きな恩がある……私もその部下もな。本来セーウェルトの盾である我々が貴様ら魔族をこの地に通すのは癪だが、時間が無いのだろう。彼女のような人物が何の申し開きの機会も与えられず、若い命を散らすことになれば、セーウェルト王国にとって何よりの損失となる。それは決して看過できぬことだ」
「……ありがとう」
「礼を言われる筋合いはない。我が国の汚点となる、悪しき前例を作らせたくないだけだ。今門を開ける。我々が部隊を整えるまで少し待っていろ」
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