【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 たくさんの生命力に溢れた花に囲まれ、そう言って笑った妹を私は一度だけ、無視してしまったことがあった。怒ったように背を向けてしまったことがあった。

 私には才能が無かったから……。聖女の力をすぐに使いこなし、物凄いスピードで私に追いつこうとする妹に嫉妬し、恐れたのだと思う。

 でもそんな一度だけの出来事が、妹をきっと深く傷つけた。
 それ以来彼女は聖女の修練に打ち込まなくなり、私と話すことも少しずつ減っていった。

 私はそれをずっと忘れていた。
 いいや、心の奥にあった罪悪感ごと、妹のせいにして蓋をしたのだ。

(あの時のこと、どこかで謝っていたらよかったかな……)

 ふと顔を上げた私の目に、眩しい太陽の光が差し込む。

 陽の光は中天に達し、広場に設えられた断頭台の刃が鈍く光っているのが見える。
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