【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
  そして、その声に押されたようにして俯けていた顔を上げた私が、口を開く――。

「魔族は……私たちと相容れない種族です――」
「そうだ……それでよいのだ……」

 陛下の声が熱を帯び、喜色を湛える気配がした。
 しかしきっと陛下のそんな顔は、一瞬後には違和感に彩られたことだろう。

「私はそう教えられてきました。皆さんもそう教わり、育ってきたことだと思います。けれど……実際は違いました!」
「くっ!? ……貴様ら、今すぐあの女の口を塞げ!」

 セーウェルト王が周りの衛兵に命じる中、私は思うがままに口を動かす。

「彼らは、国内で瀕死の傷を負った私を自国に連れ帰り、手当てをしてくれました! その後も、魔族の国に留まった私に無茶を言うどころか、非常に丁重に扱い、仲間として接してくれました! セーウェルトの人々はもっと彼らのことを知らなければいけません!」
「おい、やめるんだ!」
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