【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 二人の衛兵が私の両脇を掴んで地面に這いつくばらせるが、私は喋るのを止めたりはしなかった。

「彼らはッ、私たちと同じ……隣人を愛することの出来る心を持った人たちです! 姿形に差はあれど、決してその心は私たちのものと変わりません! だから皆さん、彼らのことをどうか拒まないで! 見たことの無い人たちの事を、誰かから伝え聞いただけの知識で、跳ね除けたりしないでください!」
「止めろと言っているっ! 痛ッ!」

 口に入り込んだ指にも噛みつき、必死に食い下がる。

「どうかお願いです! 魔族の人たちは、決して人間たちを傷つけたりしません! 彼らの話を聞いてあげて下さい! 私たちの仲間として受け入れてあげて下さい! ううっ!」

 しかし抵抗はそこで終わり、結局さるぐつわを噛まされた私は、口を閉じられる。そして、真っ赤な顔となったセーウェルト王から、ついにその命が下された。

「もうよい! 予定通り、この愚かな聖女を死罪とする! 民衆よ、刮目せよ……これが魔族と通じた者の末路である!」
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