【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「王都にいるセーウェルトの民よ! あなたがたの中にも彼女に助けられた方は沢山いるはずでしょう! ならばどうか、我々魔族があなたがたを傷つけるつもりがないということを……。そして、ただただ彼女の身を案じ、この処刑を止めるために来たのだということを信じて欲しい! ……頼む!」

 深く頭を下げた魔族の王太子の姿を見て、辺りはざわめきに包まれ始めた。

「一体、どうなってる……。魔族っていうのは悪者たちの集まりじゃなかったのか?」
「でも、この国の法律じゃさ……。そこに国王様もいらっしゃるし、逆らえば俺たちまで捕まっちまう」
「信じてあげて! エルシア様は、私がお腹の病気で苦しんだ時、すぐ薬を用意して、痛みを和らげてくれたもの!」
「つい先日まで戦ってた相手でしょう? そんな人たちのことを信用していいの?」
「今は魔族のことよりエルシア様のことじゃ! 彼女は治療費が払えなかったわしらにも優しくして下さった。返すのは後でいい、それよりもあなたたちが元気になってくれて嬉しいと言って下さったのじゃ。わしは彼女をお助けしたい!」

 いくつもの議論が街中で巻き起こったが、それでも動いてくれる人たちがいて、少しずつ民衆が、広場の周りを押さえていた兵士たちを取り囲み始めた。そして……。
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