【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 王都は慌ただしさを取り戻す。第二王子や高官の指示の元、セーウェルト兵たちが街頭警備に散っていき、街のそこかしこが華やかに飾られ、祭りの雰囲気に包まれだした。

 見れば魔族たちも、それぞれが積極的に街人たちに話しかけ、ぎこちなくも楽しそうに交流を始めている。

 私はそんな中を殿下に寄り添い、ゆっくりと歩き出す。
 誰かのおめでとうの言葉と共に、籠から振り撒かれた花弁が空に舞う。

「うん……いい空だ。私が生まれた頃はこんな日を迎えられるなんて、思っても見なかった……。無我夢中でここまでやって来たけど、今私はセーウェルトの王都を誰の目も気にせずに歩けているんだな」

 掠れた殿下の声から大きな感動が伝わって、私もなんだか鼻の先がじ~んと痺れた。
 
「きっとこれからは、そんなのも当たり前になりますよ」
「そうだね……。さあ、行こうか」
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