【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 家族は心配してはいまい。
 けれども聖女は貴重な血統が外に出るのを防ぐため、国外に出ることを法で固く禁じられているのだ。このことが知られれば、不味いことになる。

 今言ったことが冗談であってほしい――。
 頭が痛む思いで私は、目の前の人物たちを確認のために覗き見る。
 しかし、そんな願いは二人の美しい容貌によって裏切られた。

 よくよく見れば彼らには、少し先の尖った耳、やや縦長の瞳孔など、私たちには見られない特徴があるのが分かる。私も生で見るのは初めてだけど、それらは間違いなく話に聞いたものと合致していた。

 魔族……。 
 古くから伝わる話によれば、私たちが信奉する聖なる光の神の影より生まれ出でし一柱の悪しき神、それが力を分け与えて野に放ったのが、彼らの祖先にあたると言われている。

 その伝承のせいでセーウェルトはジュデットを敵対国家とみなし、魔族との交流を拒んでいる。
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