【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 わたしはギーツ様にしがみ付きながら踵で馬の尻をガツンガツン突いてやる。
 すると、王子ご自慢の白馬は甲高い嘶きを発し、めちゃくちゃに走り始めた。

「うわぁぁぁぁっ! アレニール号、落ち着け! 振り回されるっ!」
「っきゃぁぁぁぁぁぁっ!」

 半狂乱となった白馬は、狂ったように木の根を避けて跳び回りながら、森を突っ切っていく。
 わたしたちは身体をフラスコにでも突っ込まれ攪拌されるような地獄の上下運動を味わいつつ必死に馬にしがみ付く。

「うえっぷ……はぁはぁ、リリカ、お前のせいで酷い目に遭ったじゃないか。胃がひっくり返りそうだ」
「で、でもご覧ください、追っ手のほとんどを引き離しましたわ! このまま進めばわたしたちの勝ちです! やったぁ!」
「そ、そうだな! はっはっは、早くバルニュイ伯爵の屋敷へ赴き、冷えたワインでも頂いて疲れを癒すとしよう!」

 ようやく森を抜けたのか、視界の前方が開け、青く澄んだ空が見えて来る。
 それがわたしたちには祝福のサインに思え、二人が口々に快哉を上げ、笑みを戻した時だった。

 ――ドスッ。

「「…………えっ?」」
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