【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 ぱんと生真面目なミーヤが妹の頭を叩き、二人は何事も無かったかのように私たちの身支度を手伝い始めた。

「本日は、国立診療所の方を尋ねられるのでしたね?」
「うん。少し汚れるかもしれないから、なるべく動きやすい服装でお願い」
「かしこまりました」

 そうは言うものの一応身に余る身分のため、街に出るにはそれなりに着飾らないといけない。ミーヤは森のようなグリーンのドレスを私に合わせ、今は秋口に入っているので肩口に少し淡い色のケープを羽織らせてくれる。

「――メイア。少しそれは派手過ぎると思うんだがな」
「そうでございますか? ですがこれくらいしませんと、殿下の美貌に服の印象が負けてしまうのですよ」
 
 メイアが殿下に仕立てたのは、如何にも王子様という真っ白な上下の衣装だ。金縁刺繍と首元の黒いタイがアクセントとなっており、中々に美々しいが、確かに良く似合っている。

「私は綺麗だと思いますよ?」
「ほら、エルシア様も言っていらっしゃいますし……」
「そうかい? なら、まあいいか」
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