【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 セーウェルト王国の妙ちきりんな動物たちに感心したこと、食べ慣れない食事も我慢して飲み込んでいること、魔族の自分の姿を気にせず、綺麗だと褒めてくれる人がいて嬉しかったこと。それから、第二王子レセル様がよく自分を気遣ってくれて、ちょっと気になっていることとかも……。

 そんな手紙を私はにまにましながら読んでいた。もう数カ月もすれば、ミーミル様もまたこの国へ戻って来るというから、たくさんの土産話が聞けることを期待している。

 食事しながら意見を交わす陛下や王妃たちの服装にも、少しずつ、セーウェルト産の装飾品が増えている。あちらから友好の証として送られてきたものを陛下たちは率先して身に付けてくれているようで、それが両国が仲良くしている証だと思うと私は嬉しかった。

「――それでな。互いの歴史を共有すべきということで送られてきたのが、この写本じゃ」 

 陛下は食事を終えると、一冊の真新しい本をテーブルの上に乗せた。 
 殿下がその、急ごしらえの簡素な装丁をその手で撫でる。

「これに、私たちの成り立ちに関わることが記されているのですか?」
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