【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「ああ。ライソン殿の死後、彼の部屋から発見された書物の写しがこれらしい。代々セーウェルト国王にのみ伝えられた書物をこうして広めてしまう事に難色を示す者も居たらしいが、同じ大陸に住む者たちの歴史として共有すべきだとレセル殿が諭し、同盟各国に送ってくれた。原典についても、フィーゴ殿から、限りなく古い時代のものであることは確認が取れている」
「見せていただいてもよろしいのですか?」
「うむ。そなたたちにも是非見て欲しいとレセル殿もおっしゃっていた」

 その言葉を受け、有難く私は殿下と共に、その写本を覗き込む。
 それに記されていたのは、掻い摘むと以下のような内容である。

 この世界は、かつて、一柱の神様がお創りになったのだという。
 そこに生きとし生けるものを生み出し、その様子を見守っていたその神様は、ある時大地に大きく広がり過ぎた人間という種族を管理させようと、新しく二つの種族を造られた。
 
 それが魔人、そして、聖人という種族である。しかし神様は二つの種族の作成を途中で放棄し、この世界を去られた。神様はこの世界一つだけを管理しているわけではなく、他の世界で大きな争いが起きたため、そちらに移られたのだ。

 急拵えだったため、不完全なまま産み落とされた聖人は自らの役目も分からず、やがて人との間に子を為し血を薄めていった。魔人たちもそれは同様だったが、彼らはその特異な見た目から人とは交われず、大陸の中央に独自の集落を築くと、魔族とその名を変え、血筋を保ったまま数を増やしていった。
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