【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 彼が慎重に籠を運ぶ姿を見送っていると、プリシラ院長が笑顔で近づいてくる。

「あいつ、もう数年前に新薬作りなんて諦めてたみたいなんだが、あんたから陽炎草を貰って、また研究を始めたみたいだよ。またこの治療院にも顔を出すようになったしね……元気になっちまったもんだ」
「それはなによりですよ」

 そう言った私を、院長の流し目が捉える。

「あ~あ、王太子妃なんかになっちまわなけりゃ、あたしはあんたを次期院長に推薦してやったのに」
「い、いえいえ! 私なんかにはそんな地位、重たすぎます。それに……」
「プリシラ院長、止めてください。エルシアはあげませんよ。彼女はこれから私と各地を回ってジュデットのことをよく知らなければならないんですから、無用な仕事を押し付けたりしないでくださいね」
「殿下っ!?」

 院長の言葉に謙遜する私の身体を、殿下が背中からぎゅっと抱きしめる。
 その姿に院長は気持ちのいい大声で笑った。
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