【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「おーやおや、多くの御令嬢を袖にしてきた色男が逆に骨抜きになっちまってんじゃないか! ヒーッヒッヒッ、エルシア、あんた大したもんだよ!」
「そ、そんなこと……」

 そこに籠を片手に抱え戻って来たベッカーも皮肉を言う。

「はっはっは、この調子なら、世継ぎの心配もしなくてよさそうだ。エルシア似になるのか、殿下似になるのか我輩も楽しみにしておりますぞ!」
「私としては断然エルシア似の方がいいけどね!」

 けれど気持ちのいい風が吹いて陽炎草がそよぐ中、胸を張ってそんなことを言い返す殿下に、こりゃ駄目だと呆れた皆の笑い声が明るく弾けた。



 皆で陽炎草の収穫を終わらせた後、私たちは王都郊外の森の中に存在する、あの遺跡へと訪れていた。相変わらず何で出来ているのか分からない、無機質な外観の黒い材質の壁は、私たちを拒絶するようにそこへ佇んでいる。
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