【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「これ程の美しい絶景は、ジュデットでもなかなかお目にかかれないな……。私に絵心があるのならば、一つ写して、国に持ち帰りたいほどだ」

 吐く息を白くして彼の感想に同意する私とクリス。
 なにしろ、見渡す限りが白。ところどころ銀色の影が凹凸を表すように伸びている以外は、砂糖でも振りかけたようにくすみのない純白で覆われている。

 ここは、セーウェルト王国にある、グランクリュという街を少し出たところ。
 そしてここにいるのはミーミル様に、先日若くして戴冠されたセーウェルト国王レセル様。
 それにジュデットの王太子であるクリスと私エルシア並びに、おなじみの双子侍女と護衛たちだ。

 ジュデット国内での周知が一段落し、しばし羽を伸ばすことを許された私たちに同行する形で、レセル様とミーミル様がこの旅行に付いてきた。いや、もう義妹になったのだから、王女についてはミーミルって呼ぶのがいいんだろうね。

 ちなみにジュデットの国王夫妻はおいそれと国を離れられない為、私たちを喜んで見送って下さった。先々クリスが王位を継いだ時は、彼らにも是非この景色を見に来るように勧めたい。それほどに美しい、心に迫る絶景だった。
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