【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 私は驚いた。世の中にそんな便利なものがあるだなんて信じられない。
 魔族には魔法という不思議な力が使えると聞いたことはあったが、それを利用して作り出された物なのだろうか。

 しかし、少しばかり規格外過ぎる力のような気がする。もしかしたら人数とか重量の制限なんかもあるのかもしれないけれど、人や物を瞬間的に自由に移動させられる力だなんて。そんな物が幾つもあるのだとしたら、上手く使えば国の一つや二つ等簡単に滅ぼせてしまえるのでは……。

 そんな恐ろしい想像を否定したのは、宝珠で私を助けたことに納得していないベッカーの、王太子へのお小言だった。

「しかしもったいないことをなさいましたな。これは王家にもふたつとない秘宝でしたのに。おかげで出奔したあなた様は無事に戻って来られたが……何かあればどうなさるおつもりだったのです!」
「仕方ないだろう。ああでもしてセーウェルト王国に潜り込まなければ、父を助けるための薬が手に入らない状況にあるのだから……」

 ああ、やっぱり特別な物だったんだと少しだけほっとしながら、私の関心が別の部分へ向いた。

『珍しい薬を探しているのですか?』
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