【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 殿下がそんなところに単身潜り込もうとしていたというのだから、よっぽど切羽詰まった状況なのかも知れない。ベッカーも表情を曇らせている。

「我々も手を尽くしたが、日に日に陛下は弱り行くばかりなのだ。王家の秘薬にて色々な処方を試したものの効果もなく……今は立ち上がることも出来ぬ」
「お前たちはよくやってくれているし、僕もまだあきらめない。再潜入の準備は出来た、次は必ず陽炎草をこの手に戻ってくるつもりだ。では……彼女のことをよろしく取り計らってやってくれ」
「お待ちください殿下! 宝珠がなくなった今、危険すぎます! あなたになにかあれば、陛下亡き後この国を誰がまとめてゆくというのです!」
「かといって、父上を見捨てるなど、出来るはずがない! 今私にやれることはそれ位しかないんだ、行かせてくれ!」

 行くだの行かせないだの、なんだかお芝居のような熱いやり取りが交わされ始め……。

 盛り上がっている中邪魔をするのはとっても申し訳なかったけど、私は一つあることを思い出し、伝えなければならなかった。なので一生懸命手を挙げてアピールする。喉が痛くて声が出せないのがもどかしい。
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