【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「本当に大丈夫なのだろうな?」

 未だ信用してくれてないベッカーは放っておき、動きの鈍い体をなんとか動かしながら調合に取り掛かる。

 まずはこの、葉っぱのまま保管していた陽炎草を粉にしなければ。

「貸せ、そのくらいはやれる」

 こんなことなら前もって処理しておくべきだったと思いながら、極薄の橙の葉っぱをすり鉢で潰していると、それはベッカーが受け取ってやってくれた。さすが宮廷医師、見事な手際だ。

 次いで青花蜜とベニオウダケ、クロツルという樹木の粉末を薬さじで取り出し、天秤ばかりで慎重に量を量りつつ容器に加える。集中し始めたせいか、感覚が研ぎ澄まされ、大分体の動きも楽になってきた。

「おい、このくらいでいいか?」

 ベッカーが粉にした陽炎草を受け取り、それらを綺麗な水と混ぜ合わせる。その後不純物をろ過しながら耐熱容器に移していく。……大事なのはここからだ。
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