【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 容器ごと小型のオイルランプで加熱する。
 余分な成分を揮発させ、薬剤を濃縮して上澄みだけを取り出すのだ。

 ゆっくりと上下に撹拌し、沸騰し過ぎないように火加減を調節しながら時間を数える。長く火に掛け過ぎれば、すぐに成分が変化して効き目が無くなってしまう。

 愛用の砂時計を逆さにして丁度五分。経ったらすぐに火から外し、液が上下に分離するのを見守る。

 底の方がどんどん透明になり、容器の上に橙の液体の層ができた。
 私はそれを慎重に掬い取り、小さな小瓶へと移し替える。
 これでなんとか……薬自体は完成だ。
 気疲れした私は、後ろ手を突いて息を吐く。

「綺麗な色だな……。これを直接父上に飲ませればいいのか?」
 
 鮮やかなオレンジ色の薬を目にした殿下が聞いてくるが、私は首を振る。
 そしてよろよろと立ち上がると、ガーゼに薄めた薬を染み込ませ陛下の側に寄った。
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