【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 頭を下げてその場を辞する構えだった私に、王太子は信じられないことを言い放つ。

「いや、そちらももう退いてかまわない。本来大聖女の座は王妃との兼任であることが決まっているから、リリカをそこに就ける」
「正気ですか!?」
「ああ。リリカは大聖女の仕事くらい私が本気を出せばちょちょいのちょいですと言った。真の愛に目覚めた者が、愛する者の言葉を信じなくてどうする」

 いや、そんなキリッとしたお顔で言われても……。
 この国の行く末が本当に心配だ。

 確かに、リリカの才能は私以上ではあるのだろう。しかし、聖女の能力はそう簡単に開花するものではない。

 私たちが操る治癒の力は、一朝一夕で引き出せるものではない。毒素を浄化し、再生能力を促進するこの力は、強い想像力と集中力を日々養い、人体に対する豊富な知識を学ばなければそれを適切に使用することは敵わない。私も治癒術をまともに使えるようになるまで、小さい頃から十年近くの時を修行に費やしている。十歳前後を最後にこれまで遊び惚けていたリリカが扱えるとは思えない。
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