【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「おかげさまで完全に治ったわ。どうもありがとう、大変お世話になりました」
「構わんさ、お前のおかげで陛下も快癒が近い。国家元首の命を救ったのだから、誇りに思うがよいぞ。わはははは」

 彼は嬉しそうに私の肩をぺしぺしと叩く。
 自分で言うのもなんだけど、年頃の娘に気安く振れるのはどうなのかと思う。
 けど一方で彼は医者だし人間という種族でもなく、私たちと同じように考えてはいけない。

 いつかにも言った通り、彼らは魔族で特殊な外見を持ち合わせている。
 しかしそれだけではなく、この世の法則にもとらわれぬ不思議な力、魔法というものを扱えたり、同時に見た目には現れない変化を持つ者も存在するらしい。

 ベッカーがその好例で、彼は見た目私と同じくらいの年代に思えるのだが、実はもう五十年以上を生きているらしい。今見てもちょっと信じられない。

 つまり、精神的に成熟しているというか、端的に言えば身体は若くともお爺ちゃんなのだ。彼からすれば私など孫のような年代に思えるのだろう。そう思うと、なんだかその態度も微笑ましかった。
< 70 / 471 >

この作品をシェア

pagetop