【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「此度の件について、陛下と王妃は大変に感激なさっておられる。直々にお前に褒美を与えたいと仰せだ」
「それじゃ私、ご挨拶に伺わないといけないのね? う~ん……」

 あらら、ちょっと大袈裟なことになってきたぞ。
 自分としては病に苦しむ人を救うことは特別な事ではないから、あまり恩義に感じてもらうと負担だ。病気が治ってめでたしめでたしくらいに思うくらいで丁度いいのに。

 なんとか辞退できないか、そんな私の気持ちが伝わったのか、ベッカーはしかめ面をした。

「お前の内心がどうあれ、今回の謝礼は謹んで受け取るべきだぞ。陛下の命を救うということは、このジュデットに住む多くの民の生活を救ったの同義で、大きな意味を持つ。それになにより、おふたりや王子もただお前に喜んでもらいたい一心なのだから、何に気兼ねすることがあろうか。胸を張っていただけばよいのだ」
「……そうね。そういうことならありがたくいただくわ。でもさ……」

 確かにその話は純然たる好意から出ているのだろうし、ご意見ごもっともである。
 報酬などは後回しにし、取りあえず感謝の気持ちだけでも受け取るべし。
 そう決めた私は、さて問題と鏡の中の自分を見た。
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