【WEB版】追放したくせに戻ってこい？ 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります！ めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく

「ならいいじゃない、普通に接してよ。昔がどうだったかとか、私知らないし」

　過去の魔族たちと人間の間であったことを今の私たちが気にしても仕方がない。
　せっかくこうして会ったのだし、悪い人じゃないのならいい関係を築きたい。

　だから私は、ふたりに手を差し出す。

「ね、仲良くしてよ。せっかく来たんだからこの国のこと、色々教えてもらいたいし」
「「……わかりました」」

　するとふたりは、おずおず私の手を握ってくれた。
　別に私たちとなんら変わらない、温かい手だ。

　新たな知人ができたのは喜ばしい。
　私は彼女たちと他愛もない会話に花を咲かせ城の中を進んでゆく。
　そうしていると、衣裳部屋まではあっという間だった。