【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 ミーヤとメイヤが手早く化粧を終わらせてくれ、これで人前に出る準備は完了。
 ふたりにお礼を言い、私が立ち上がると彼はこちらに腕を差し出す。
 エスコートして下さるってことだよね、これ。

「え~と、いいんでしょうか?」

 私のような他国人にまで女性に対する気遣いを忘れないなんて、本当に彼は紳士で感心するのだけれど、息子に変な虫が付いたと陛下や王妃に思われそうで不安な気もする。

「女性に気を遣うのはどこの国でも一緒だよ。さあ行こう、謁見の間で父上たちが待っている」

 でも彼は、穏やかな口振りながらも押しの強さを見せ、従う他ない。
 私は彼の腕にそれとなく手を添え、ぎくしゃくと手足を動かし出す。

 何事も身に付けておいて損はないものだ。
 ちょっとだけこの時は、セーウェルト王国で妃教育を受けられたことを感謝する私だった。
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