【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく

10.元大聖女、表彰される

 殿下に連れられ訪れたのは、どうも謁見の間であるようだった。
 長い紫色の絨毯が、奥の玉座まで続く。

 そして左右では臣下の人たちが立ち並び、私を見てひそひそと話しているのが見える。できれば、どこかもっと小さな部屋で個人的なお話にして欲しかったんだけどなあ……。

 とはいえ、そこまで敵対的な視線が感じられないのはほっとする。
 私が陛下の治療に協力したことが広まっているからだろうか。

 殿下に伴われた私はゆっくりと前へと進み、玉座から一定の間隔を開けて立ち止まる。

「陛下、エルシア・アズリット嬢をお連れいたしました」
「うむ、ご苦労であった」

 殿下が隣で一礼の後跪き、私もセーウェルト式の礼を取って彼に倣う。
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