【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
「よって、我々はそなたを厚く遇したい。エルシア・アズリットよ……そなたにはジュデット名誉国民の位を授けようと思うが受け取ってもらえるかな? それに加え、望むのであれば宮廷医師としての役目を任じようと考えておるが、いかがか?」
「は、はぁ……」

 何分いきなりのことなので私の頭は回らない。どうしよどうしよ。
 宮廷医師はともかく……いったい、名誉国民と言うのは何ぞや?
 生返事したまま固まる私に王子がこっそり説明をしてくれる。

「ジュデットが与える名誉国民位と言うのは、国家に対し特別な功績を挙げた人物に対し与えられる一代限りの貴族位だよ。伯爵相当に当たり、国政への参画も認められる」
「な、なるほど……」

 小声で相槌を打ちながらも、私はそれについてはちょっと問題があるかもと考えてしまった。

 彼らが存じていない訳はないと思うのだが、私は聖女である。
 そして大聖女という役割から外れたとはいえ、生まれつき聖女だという身分からは逃れることはできない。そういう契約の元、実家は王国から厚遇されている側面もあるからだ。そのためある意味で私は、セーウェルト王国の所有物なのであると言えよう。
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