【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく
 それを踏まえて……大っぴらにこのことが広まり、もし私がジュデットに居ることがセーウェルト側に知られてしまったらどうだろうか。やはりその経緯がどうであろうと、間違いなく外交問題に発展する。セーウェルトはいつでもジュデットに付け込む隙を探しているだろうから。

 よって私は陛下におそるおそる申し上げる。

「誠に申し上げにくいのですが……その褒賞、辞退させていただくことはできないでしょうか」
「ふむ……」「まあ……」

 それを聞いても陛下たちはさして驚かず、私の意図を汲んでくれた様子だった。

「自国の身分との兼ね合い、聖女であること気にしておるのじゃな?」
「はい。私はつい最近までセーウェルト王国の大聖女として務めておりました。それがいきなりジュデットの宮廷医師として召し抱えられたことが広まれば、セーウェルト王国は必ずこちらに難癖を付けて身柄を取り戻そうとするだけでなく、無茶な賠償を要求するはず。それに私も自国から罪人として後ろ指をさされたくは無いのです」
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