【WEB版】追放したくせに戻ってこい？ 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります！ めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく

　人間たちが我らに抱いているのは憎しみではなく恐れだ。ただただ得体の知れない伝承から来る恐怖心の為に血で血を洗う争いを続けるなど、何と馬鹿馬鹿しいことか。そう説きながら、私たちはずっと誤解を解くための手掛かりを探して来た。

　そして我が先祖たちの研究の成果により、伝承は我らを迫害し孤立させるための都合のいい作り話に過ぎなかったことが、近年明らかになり始めた。

　そしてその頃にはジュデットは幸い国家として、周辺国と対抗できる程の戦力を整えていた。次第に他国からの侵略は形を潜め、表向きには友好を結ぼうとする国家も増えてきたのだ。

　未だ我々が特別な力を持つことに対する彼らの恐れは大きい。けれど、少しずつ先祖たちの努力は身を結びつつある。ジュデットはいくら苦難に晒されようと、こちらから他国を侵略し領土を脅かそうとしたことはない。それは我が国の確かな誇りだ。

　今や周辺国で我々を明確に敵視しているのはセーウェルト王国のみ。
　一貫して魔族の存在を認めようとはしないあの国がそうする理由を判明させ、徐々にでも彼らに我々を受け入れてもらうこと。そしていつか、多くの魔族が安心してこの世界で暮らせるようにすること。それが当面のここジュデット国の課題であり、我ら王族の悲願である――。