【WEB版】追放したくせに戻ってこい? 万能薬を作れる薬師を追い出しておいて、今さら後悔されても困ります! めでたく婚約破棄され、隣国で自由を満喫しているのでお構いなく

 そんな事情、彼女は知る由もないだろうに……エルシアは、私たちを見てもいっさい交流を拒んだりする様子がない。ミーヤやメイアとも仲良くしていた様子だし、今も目の前で臣下の一人、立ち上がった熊のような姿をした男性とにこやかに握手を交わしている。

 その姿は、私たちの望む未来を強く思い浮かばせる。
 いつの日かジュデットが……世界がどんな種族であろうと、仲良く手を取り合えるようになれば。

「でーんかっ、飲んでますかぁ?」

 対応がひと段落したのか、彼女がグラスを掲げながらこちらを向いた。
 顔は薄っすらと赤く、目元も緩んでいる。

 その姿を見て、私は失策を悟った。彼女が酒に強いかどうかを聞いていなかったのだ。自ら進んでワインに手を付けていたようだから、てっきりそれなりに嗜むのだと思っていたが……この様子だと。 

「エルシア? あの……ご気分はいかがかな?」
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