桜ふたたび 前編
一馬の職場仲間や澪を招いて、送り火見物しながらのバーベキューパーティーは、毎年の恒例行事だ。
澪も楽しみにしていたはずなのに、今朝になって突然のドタキャン。律儀な彼女のこと、すわ一大事かと理由を尋ねたら、急に彼が来ることになったからと申し訳なさそうに言う。
期待せずに彼も誘ってみたら、ほっとした様子が電話口から伝わってきて、菜都の方が狼狽えてしまった。
会ってみて、得心した。澪はふたりきりのシチュエーションに困却していたのだ。
無理もない。ただでさえあがり症のビビりなのに、よりによって相手はちょっと変わった俺様の外国人──、どころか、ただそこに黙って座っているだけで周囲を緊張させるほんまもんの王様だ。
いつもは豪快で酒が入るとますます陽気な一馬の仲間たちも、ニコリともしない彼を前にして、まるで修行僧の真冬の朝餉のように神妙にしているから、澪がますますいたたまれなくなっていた。我が家の天使がいなければ、みな凍死していたところだ。
そんな彼が、当前のように澪に料理を取り分けたり、彼女の首筋に流れる汗をさりげなくおしぼりで拭ったりと、甲斐甲斐しい。
ときおり見せる彼の微笑みが、澪にだけ向けられているのだと、気づいていないのは彼女だけなのだ。
澪も楽しみにしていたはずなのに、今朝になって突然のドタキャン。律儀な彼女のこと、すわ一大事かと理由を尋ねたら、急に彼が来ることになったからと申し訳なさそうに言う。
期待せずに彼も誘ってみたら、ほっとした様子が電話口から伝わってきて、菜都の方が狼狽えてしまった。
会ってみて、得心した。澪はふたりきりのシチュエーションに困却していたのだ。
無理もない。ただでさえあがり症のビビりなのに、よりによって相手はちょっと変わった俺様の外国人──、どころか、ただそこに黙って座っているだけで周囲を緊張させるほんまもんの王様だ。
いつもは豪快で酒が入るとますます陽気な一馬の仲間たちも、ニコリともしない彼を前にして、まるで修行僧の真冬の朝餉のように神妙にしているから、澪がますますいたたまれなくなっていた。我が家の天使がいなければ、みな凍死していたところだ。
そんな彼が、当前のように澪に料理を取り分けたり、彼女の首筋に流れる汗をさりげなくおしぼりで拭ったりと、甲斐甲斐しい。
ときおり見せる彼の微笑みが、澪にだけ向けられているのだと、気づいていないのは彼女だけなのだ。